第15回「ハイブリッドはお利口ちゃんみたいで嫌だと言ってたあいつ、爆発しろ」
ここ15年。イタリアやドイツがものすごいスポーツカーを作ったり、アメリカがバカでかいSUVを作ってブイブイいわしてる間、日本は静かにハイブリッドカーを作って世界を征服していきました。地球にやさしく、エコロジーでロハス、燃費が良いから財布にもやさしい未来の車、それがハイブリッドカー。なのですが、格好イイかどうかと言われたら、どうなんでしょうね? 「プリウス」に格好いいイメージを持っているかどうか。頭がよさそうな感じはするが、中学の時クラスで一番勉強が出来たけど、色白で面白みのなかった奴、みたいなキャラのような気がするんです。有機野菜とか食ってるような。ランエボやRX-7を乗り回しているような肉食系とは対極。飲み会の席で、隅っこで酒も飲まずに一人で有機野菜食ってそうでしょう? コーヒー飲むときも、シロップを半分で止めたりしそうでしょう? そんな勝手なイメージが積もりに積もって、世の中の車好きが「ハイブリッドは何かダサい」になっていた所、コイツが出てきたんです。
2010年式 ホンダ CR-Z
ホンダ CR-Z
初めてこれを見たのは、2007年の東京モーターショー。なになに、CR-Xの再来だと? そして何だこのヘンテコなデザインは!と思っていたんですが、見れば見るほど格好良くなっていくデザインだったようで、私は毎晩寝る前には10分間CR-Zの事を考えながら寝るようにしていたくらいです。そして2009年の東京モーターショー。海外メーカーが何故か一斉に撤退した悪夢のようなモーターショーだったわけでしたが、トヨタのFT-86と並んでこのCR-Zは会場の数少ない華だったんです。
2009年東京モーターショーの時の写真(筆者撮影)
これはかなり量産型に近い形であると。2007年に提示されたプロトタイプの時のエグさが大分無くなって洗練されてました。グリルの真ん中にあったHマークが上に移動してここにナンバープレートが来たという変更はたったにせよ、ほぼこのまま出てきました。
低く構えたロー&ワイドなボディ、4席あるにせよほぼ二人乗りという割り切り、やたらサイバーなインパネ…
「利口でダサい」と思われていたハイブリッドカーの世界にホンダが殴り込みを! これは痛快そのものではないでしょうか。
低く構えたロー&ワイドなボディ、4席あるにせよほぼ二人乗りという割り切り、やたらサイバーなインパネ…
「利口でダサい」と思われていたハイブリッドカーの世界にホンダが殴り込みを! これは痛快そのものではないでしょうか。
リアビュー
とはいえ、ホンダが本気になればなるほど価格はつり上がっていくもので、250万から300万円くらいの車となって売られていました。これではちょっと新車では買えないなぁ〜高いなぁ〜、2007年からチェックし続けてたけどいざ発売されて値段の高さに負けてしまうって情けないな〜なんて思ってグズグズと毎日過ごしていたのですよ。相変わらず寝る前には10分間、CR-Zの事を考えて。でも、そろそろCR-Zの事は忘れようとした頃に、やっと試乗に行けたんです。それが2010年の夏。
コックピット
CR-Zフィーバーも良くも悪くも落ち着いて、FITばっかり売れるホンダのディーラーの片隅で、CR-Zの試乗車はひっそりと佇んでいました。2007年から見てきたCR-Zという車の完成系がここにある、そしてどの家族連れも見向きもしない。この奇妙な光景に、「俺が今ここで試乗しないと誰が試乗するのだ?」という気持ちになったので、営業さんと一緒にCR-Zを試乗。待ち焦がれた感動の瞬間です。
メーター
でも、色々な意味で予想と違いました。外から受けるスポーツカー然としたイメージや、低い着座姿勢とは違って、エンジンはいたって普通。乗ったのがCVT車ということもあったのかも知れないが、スポーティな気分は味わえるな!という感想だったんです。
それは別に悪い事ではなく、ホンダもいつでもK20Aなどの「タイプR」に搭載しているエンジンを積もうと思ったら積めるのでしょう。でもそれではこれがCR-Zである意味が無い。あくまでも、ハイブリッドのスポーツという相反する価値観を一つに纏めるのがこの車の存在意義であると。燃費を良くして地球に優しいけど、走りは良くて気持ち良い。何よりも気分が高まる。そういう車を作ろうと大まじめに作られているわけです。だからどうしても、純粋なスポーツカーの加速などと比べると、見劣りしてしまう。
でも、それが何だって言うのだろう? と、また寝る前に布団の中で考えるんです。
それは別に悪い事ではなく、ホンダもいつでもK20Aなどの「タイプR」に搭載しているエンジンを積もうと思ったら積めるのでしょう。でもそれではこれがCR-Zである意味が無い。あくまでも、ハイブリッドのスポーツという相反する価値観を一つに纏めるのがこの車の存在意義であると。燃費を良くして地球に優しいけど、走りは良くて気持ち良い。何よりも気分が高まる。そういう車を作ろうと大まじめに作られているわけです。だからどうしても、純粋なスポーツカーの加速などと比べると、見劣りしてしまう。
でも、それが何だって言うのだろう? と、また寝る前に布団の中で考えるんです。
横から
世界のハイブリッドカーシーンを牽引して15年、CR-Zは日本にしか作れない車だと思います。なぜなら、プリウスやインサイトというお利口でストイックなエコカーに対する、エコカーという世界の中でのアンチテーゼであり、オルタナティブだから。エコカーは利口で賢そうで優等生みたいでダサいよね、という認識に対するホンダの本気。CR-Zは、CR-Z以上でも以下でもない、存在そのものが他に絶対に無い車。
CR-Zを一度でも運転して、ホンダのまだちょっと迷いがあるかも知れないけど、本気な部分に少しでも触れれば、ハイブリッドなんていうのは単なる道具にしか過ぎないと考えが変わると思います。
ちなみにCR-Z、ハンドリングとブレーキ性能、シフトフィールは最高です。乗るならMTがいいと思います!
やっと中古で流通してきました。
CR-Zを一度でも運転して、ホンダのまだちょっと迷いがあるかも知れないけど、本気な部分に少しでも触れれば、ハイブリッドなんていうのは単なる道具にしか過ぎないと考えが変わると思います。
ちなみにCR-Z、ハンドリングとブレーキ性能、シフトフィールは最高です。乗るならMTがいいと思います!
やっと中古で流通してきました。
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