たまらん中古車
第26回「地味で大人しいけど、しっかり者的なヤツ!」



車というのは作る国によって、その国の持つ性格が車の味付けに反映されてきます。おおらかな国アメリカが作る車はおおらかだし、陽気なイタリアが作る車は陽気だし、和を尊ぶ国日本が作る車は控えめで静かだし、芸術とオシャレの国フランスの作る車は前衛的でエロいです。何とも不思議。車によってその国の文化を知ることが出来ます。
そして日本人にとって「外車」といえば、何と言ってもドイツ車でしょう。VWBMWベンツアウディの四天王に加え、ポルシェ。そうそうたる顔ぶれのメーカーが揃っています。
が… 一つ忘れていませんか、アイツのことを…。思い出してみてください、この5つ以外のドイツ車があるでしょう。ちょっと前までたくさん見かけたアイツですよ!




2003年 オペル ベクトラ
格好イイと思うんですよね
格好イイと思うんですよね




そう、「オペル」です。知ってるでしょ? でもなぜ、忘れていたんでしょう。確かに最近、とんと見かけません。そりゃ走ってる車は見かけますが、ディーラーが無い。そしてCMなども無い。オペルは一体今どうなってしまっているのでしょうか?
あれは2006年の秋。オペルというメーカーは日本から撤退を発表し、2006年末にも完全撤退したのでした。一つの外車メーカーが日本から消える。小林旭の「自動車ショー歌」にも「オペルオペルはもうおよし」という歌詞で登場していた、日本で40年の歴史のあるオペルが、です。
かつてオペルというメーカーは、日本ではヤナセというディーラーが取り扱ってました。ヤナセは昔はベンツやBMWの他にVWも扱ってましたが、VWが日本法人を立ててそちらに販売を移すと、ヤナセは躍起となり、VWの販売で担っていた小型車「ゴルフ」などの後を担う商品としてオペルを強力に売り出しました。で、1995年には何とオペルの「ヴィータ」がVWを抜いて輸入車販売のトップになったわけです。これがオペルの日本での一番の黄金時代。販売店の努力の成果なのでした。




リアビュー
リアビュー




しかしそこからオペルの不遇が始まります。「ヴィータ」は150万円と、輸入ドイツ車にしては低価格であることがウリでしたが、それ以降ベンツのAクラスなどが出てきたりして、ヤナセはオペルに頼らなくもよくなってきたわけです。
とはいえオペルというメーカーは、小型車だけのメーカーではないわけです。VWと同様、高級セダンもしっかりとラインナップとしてあるわけですが、日本人が外車に対して求めるもの… いわゆる「ステイタス」、持っているだけでドヤ顔ができること、ってのがオペルには足りなかったわけですね。「車買った」という人に対して、それが「ベンツ」だと「おぉ〜ベンツ!」と尊敬のまなざしを集め、自分が偉くなった錯覚に浸れますが、「オペル」だと「へぇ」と言われるだけなわけです。ブランドってのはこの差のことです。浸れるかどうか。車の作りがどうのとか走りがどうのとかというのは、外車を買う大半の人にとっては二の次であり、まずはステイタスなのだろうと思います。日本には信頼性の高い「日本車」が山ほどありますから、それを避ける人というのはステイタス重視になることは想像に難しくないわけです。
そしてさらに、2000年代に入ってから、オペルの親会社である「GM」が日本展開としてGMのディーラーでオペルを販売し始めると、今度はヤナセとGMとでお客さんの取り合いになり、次第にヤナセのやる気がなくなってくるわけです。ヤナセとしては、BMWとかベンツが売れている中で敢えてオペルを売る必要ってのが分からないし、オペルを欲しい人はどうせGMのディーラーから買うんだろうし、ということで、ヤナセはどんどんオペルを売らなくなっていきました。幸か不幸かオペルの運命はGMにゆだねられたわけです。




格好いいサイドビュー
格好いいサイドビュー




でもそんなGMさん、2000年代に入ってからそれまでの放漫経営が祟り、大不振。トヨタがハイブリッドとかレクサスを頑張ってアメリカ国内でGMからどんどん客を奪っていく中、GMは相変わらず「アメリカらしいおおらかな車」から抜けきれず、経営が悪化してきていたわけです。そしてGMはどんどんリストラをしていくわけですが、その中に「日本でパッとしなくなったオペルの販売をやめる。オペルはヨーロッパでしか売らない」という戦略を立て、ついに2006年末、日本からオペルが消えました。ヤナセが40年かけて育ててきて、一時期は輸入車No.1にもなったオペルが、親会社のヘボい事情で一瞬して姿を消すという、何とも寂しい出来事です。
まあオペル側としてもよく言われるのは、オペルというメーカーは新車を販売して最初の1年くらいはどうにもつまらない故障が多いと。これはオペルというメーカーの品質の問題でもあるんですが、外車にはそういう事が往々にして多い中で、日本車と同じようなカジュアル感覚でオペルを買ったユーザーが、その問題について一気に口コミで広がってしまい、評判を落としてしまったということもあるようです。




コックピット
コックピット




今、日本で買えるオペルの車は、一番新しくて2006年のものです。車種で言うと「アストラ」でしょうか。他、従兄弟的な車種としてスバルの「トラヴィック」や、サーブの車なんかもあります。もちろん本国ドイツでは今でもオペルの新規車種はどんどん作られていて、これがもうシブくて格好イイデザインのが多いんです。VWをトヨタ的な「ベタ」だと思う人向けの、ハズシのメーカーとしてのオペル。日産的でもありホンダやマツダ的でもあり、非常にカウンター的な、エッジの効いた何かを感じます。それはデザインからもプンプン漂ってます。ちょっと一般ウケからは離れた所にあるこのデザイン。派手さは無いけど、尖った何かがあります。
走りや性能もBMWやVWと引けを取らず、かっちりしたシャシー剛性に良いシートで、さすがアウトバーンの国と言うだけの直進性を誇ってます。そう、これは紛れもないドイツ車。BMWに性能を求めるのであれば、オペルだって選択肢の一つに加えるべき存在なんです。




フロントシート
フロントシート




そんな不遇なオペルですが、とにかく真面目に作られています。車としての性能はもう申し分ないでしょう。何も困ることはないと思います。ただ、ブランドがもう、日本ではボコボコ…。中古車でしか買えない現状、「今からオペルを欲しがる人」というのは「変態」扱いされるという時代になってしまいました。
でもこの連載を読んでる貴方が、今回の連載を読んでオペルの車を欲しがったとき、周囲から「変態」呼ばわりされることもあるでしょう。でも、意志を強く持ってください! 車に罪はないんです。貴方の感性も間違ってないんです。今このタイミングで能動的にオペルを買う。「車好き」としてとても信頼できる人だと思います。そんな貴方に一言贈ります。「この変態が!」




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※当ページ内の内容は2011年11月4日現在の情報です。




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