はぐれDJ道
第5回「サイタマノラッパー オリジナルサウンドトラック / SHO-GUNG」
映画大好き
イッツ・パーティ・タイム。私、DJイオは映画が大好きだ。去年は2本もの映画を観に行った(ヱヴァンゲリヲンとカールじいさん)。中でも私が好きなのは「観る音楽」だ。
要するに音楽、特にダンスミュージックを題材にした映画を好んで観ている。
「WILD STYLE」「SCRATCH」「MAESTRO」「8 Mile」etc..etc...
ブロンクスの空気を切り取り、ハウス誕生前夜のインタビューを聞き、Q-BERTはスクラッチで宇宙と交信できる事を語り、エミネムは車工場で勤務中にこっそりセックスをする。

そんな私が今年初めて観に行ったのが「SRサイタマノラッパー」だ。
詳細はハイパー・リンクをクリックし、オフィシャルサイトを参照して頂きたい。
がそれすらも億劫な方の為に簡単に説明しよう。




SRサイタマノラッパー
北関東のど真ん中、レコード屋もライブハウスもないサイタマ県の田舎町(劇中ではフクヤ)
ヒップホップグループ「SHO-GUNG」の仲間たちはいつの日かライブをすることを夢見ている。

が現実では、主人公のIKKUは仕事がなく家族から邪魔者扱いされている「ニートラッパー」。
親友のトムはおっぱいパブでバイトが忙しい「おっぱいパブラッパー」。
後輩のマイティは実家のブロッコリー畑で働く「ブロッコリーラッパー」。

そんな彼らは伝説のトラックメーカー「病弱なタケダ先輩」や地元の先輩たちの力を借りて、自分たちの曲を作りライブをやろうとする。

そんなある日、高校の同級生の千夏(みひろ)が東京から帰ってきて偶然、IKKUはスーパーで再会してしまう。
千夏は高校を中退して東京でAV女優として活躍し、また地元に帰ってきたのだった。
些細なすれ違いから、千夏のことを巡って次第にラッパーたちの夢がバラバラになっていく…。

サイタマ県の片田舎で不器用にラッパーを目指す青年たちの、どこか哀しく、やがて可笑しな日々。

(オフィシャルサイトから引用した文章を元にしました)




SRサイタマのラッパーのテーマ
私は鑑賞後サウンドトラックを購入し、役者の方々(IKKU役駒木根氏、TKD先輩役上鈴木氏)にサインを頂き帰路についた。そしてこのCDを耳にしそこで初めて涙した。




「SHO-GUNG」×「 SRサイタマノラッパー」 PVフルver.




ダンスミュージックは未だ日本ではマイノリティだ。学校や会社でも周りに聴いている人間は少ない。周りの人間に説明しても理解してもらえない。
「何その服?」「ヒップホップ?あれでしょ?ヨーチェケラッチョってやつ?」「DJ?あのこうキュッキュッ?て奴?」「テクノ?…パフュームとか?」「ハウス…?って何?テクノとどう違うの?」「歌がない」「なんであんな歌い方なの」


「何時だと思ってるんだ!うるさい音楽かけて!」
(DJイオがここ10年間で大家さん、もしくは実家の親に何度か言われた言葉)


主人公IKKUも昔の同級生にバカにされ、家族には「将来の事も考えずよくわからない事やってる」と思われ、市の偉い人達の前でライブをやっても理解してもらえない。東京に行くのはなんだか怖い。ブロッコリーが名産の北関東の日常は本当に何もない。エミネムのように必死に伝えるべきメッセージもない。でもHIPHOPが好きでしょっぱい日常を何とかしたい。


このような映画なのだが本編について語ると長くなりすぎてしまうので割愛しよう。
SRサイタマノラッパーのサントラでは、映画では語られなかった部分を補完できるような形で各登場人物のトラックが入っている。読者の方々も愛聴しているであろうストリートファイター2のサントラをイメージして頂ければ近いかもしれない。

店頭販売、通信販売のほか、KINGBEATでデータ販売もされているので以下視聴、もしくは購入して読んで頂けると幸いだ。

KINGBEAT - SHO-GUNG : サイタマノラッパー オリジナルサウンドトラック




「DJ TKD 辞世のラップ」
何曲か例にあげてこのサントラの楽しさを伝えていきたい。上記リンクの12曲目では「DJ TKD 辞世のラップ」が視聴できる。

劇中では「TKD先輩」という凄いトラックメーカ−が病気で地元に帰ってきた事しか明かされない。
彼はどてら姿で青白い顔、半分寝てるような表情で玄関先までにしか顔を出さない。

「あ…」「曲…」「いつまで…?」

やる気があるんだかないんだかわからないTKD先輩は遺作をSHO-GUNGに託し急逝してしまう。
以下、歌詞の一部から抜粋して引用する。



ここはどこだ サイタマはFUKUYA たった四畳半 湿った布団の上から
俺ことTKD だらだらと死ぬ間際 言葉 垂れ流すわ

体の弱い俺はトラックメイカー 明日が怖いがまぁ仕方無ぇか
1979から刻んだ年月 齢29歳に救済はなく
こんにちは俺の筋ジストロフィー 叩くMPCがトロフィー
奇跡はなくただ神経煮詰まる 辞世のラップ残し人生終わる
-----------
期待に添えない 時代に乗れない もう何も見えない
頭煮つまり もう馬の耳に念仏ならぬ豚の耳にトンコツでできた僕が
世界の中心からズレたところでHIPHOPを叫ぼう
MUSICシーン外れても断るGIVE UPと絶望



劇中ではほぼギャグとしてしか扱われない先輩だが、コンピを聴くと彼がどういった日常を過ごし、何が好きでどんな思いを抱えていた人間かがわかる。
咳こみながらも辞世のライムを書き、家から出られず犬の鳴き声しか外からは聞こえない。ジュラシック5やデラソウルに思いを馳せ、闘病しながらトラックを作るしかない。
このサントラで一番好きな曲だ。




李君のラップthe13億
また、劇中で端役として登場する、李君という中国人がいる。
MIGHTYのブロッコリー畑を手伝っている彼はほんの一瞬しか登場しないのだが、そんな李君のトラックもサントラに入っている。



ニーメンハオ!こんにちは 僕の名前はリーです
日本でブロッコリー作ってます 中国から来た留学生です
test test マイクのテスト North,South僕らのもんです
飲んだら乗らない自転車に 13億自然に増えてます

半ライス大盛りで ナイスな踊りはノリノリで
小っちゃな頃から丸刈りで 十五で苦労を覚えたよ
ラーメンマンとモンゴルマン 本当は同じラーメンマン
みんな同じ人間です 世界の中心 中国です



曲中に入っているMCも日本人が偏見で抱く中国人感丸出しで非常におもしろい。李君はヨーヨーマが好きらしい。




埼玉生まれブロ畑育ち 山の幸とは大体友達
アルバム全体を通して様々な部分にユーモア、パロディ、妙なリアル感、ふと心に刺さるライムが散りばめられている。近年データ購入が増えて歌詞カードをじっくり見ながら曲を聴く回数が如実に減っているのだが、久々に歌詞を読みながら楽しめる曲の数々だった。

「観る映画」のサウンドトラックも発売されている事があるが、映画のバックトラックをただ羅列しただけで、本編、サントラどちらも素晴らしいものは少ない。
がこのサントラは普段ヒップホップもハウスもテクノも全く聴かない読者の諸君にも自信を持ってお勧めできる。聴くと映画をまた見たくなり、映画を見るとまた聴きたくなる。まだ映画を観てない方にも是非聴いて想像を膨らませて頂きたい。


「SRサイタマノラッパー」は現在2つの映画賞を受賞し「ライムスター宇多丸のシネマランキング2009」でもベスト1位。現在「SRサイタマノラッパー2」も撮影を終えており公開予定だ。今後の公開予定についてはオフィシャルサイトを都度参考にして欲しい。

はぐれDJ道第一回で紹介したレオパルドン政所氏もオフィシャルのアンサーソングを製作し、youtubeで公開している。




サイタマノラッパー「俺らSHO-GUNG」ファンキーコタMIX




またSPEEDKING RADIOに映画主演の駒木根隆介氏が出演、様々なエピソードも聴けるのでこちらも合わせて聞くとおもしろい事うけあいだ。

SPEEDKING PRODUCTIONS 【Blog and Podcasting】:BUBBLE-B・政所のSPEEDKING RADIO Vol.72 ゲスト:駒木根隆介 (SR サイタマノラッパー 主演)


その他、YOUTUBEに各キャラクターとしてのオフィシャルインタビューも動画が上がっているのでこちらも合わせて観ると楽しんで頂けると思う。




また関係ないのだが私もSHO-GUNG同様、エミネムを目指し活動をしている人間の端くれとして、上記KINGBEATでトラックが購入できる。私が世界にグンググーンするためにも読者の方々に購入して頂きたい。ビート・ゴーズ・オン。




関連サイト
SR サイタマノラッパー公式サイト
映画「SR サイタマノラッパー」公式ブログ





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