はぐれDJ道
第11回「小林銅蟲インタビュー」
小林銅蟲氏との出会い
イッツ・パーティ・タイム。DJイオだ。今回は小林銅蟲氏(以下銅蟲)にインタビューを行った。
現在、代表作であるweb漫画「ねぎ姉さん」で有名な氏だが、過去に私とユニット「goodeath」を組んで曲を作っていた事があった。
漫画のファンの方ならご存知かと思うが「ねぎ姉さん」のサイトには氏が作ったオリジナルの音源も置いてある。彼と出会ったのは私が大学生の頃だったが、その頃の事も含めインタビューを行った。

小林銅蟲





ねぎ自作曲(音塊)‐ニコニコ動画(9)





ねぎ姉さん「鉄骨を殴る黒姉さん」‐ニコニコ動画(9)




スタートはゲーム音楽
イオ:
 今日はよろしくお願いします。いきなりですが初めて聴いた音楽はどんな音楽だったんですか?


銅蟲:
 元々音楽には暗くて、CDを初めて買ったのが中3の時だったんですよ。ファイナルファンタジー5のアレンジCDを買って、ゲーム音楽を中心に聴いていました。
 それで高校2か3年の頃に、イオさん達がやっていた全日本ファミプロ協会(※1)の同人誌を買いました。僕自身はコミケに行ってなかったんですけど、カタログを見て「このサークルはヤバい」という事で行っていた弟に本(ファミ魂サム/ファミ魂レザ)を買ってもらいました。

 その本は「次回・スーマリ256W攻略」って書いてあったのにやらなくて、お便りを出したらファミプロの人達と親しくなって、僕が入会してその記事をやることになりました。かなりきつかったけど元祖スーパーモンキー大冒険よりはマシだと思いました。
 
 スーパーマリオブラザーズ(同人誌の内容のアーカイブ)
 
 それはともかくイオさんがファミプロ内の会報に書いていた、ガバのパーティのレポート(はぐれDJ道第2回参照)を読みまして、それを読んで、ガバを知りました。ロックやダンスミュージックをいきなりすっ飛ばして、ナードコアやロッテルダム寄りのガバに入って、その頃に屋根裏のスピキン(スピードキング:ナードコアの代表的なパーティ)にイオさんと遊びに行きました。

 最初に曲作ったのが大学1年の時で、波平会(※2)のサイトを見て、MOD(※3)というものがある事を知って、なんかアクティブなことしなきゃいけない英語の授業の時に、MODで曲を作って発表しました。手元にプレステのビートマニアがあったので、それの音素材を使ったスーパースターフォースのRemixでした。
 いまいちうけなくて、首をボキボキ鳴らしてみたら先生に30分怒られました。大野!てめえ!アメリカかぶれ!それが最初ですかね…
 それから今に至るまで95%ぐらいMODでしか曲を作った事がありません。



イオ:
 当時の銅蟲君はBMS(※4)などもかなりやり込んでいた印象があったのですが。


銅蟲:
 BMSも結構やってましたね。あの頃は専用コントローラをPCに繋げるやつが手元になかったので、キーボードでやってました。最近またやってます。
 同時押しが効かなかったので少しずらして押したりして。今の若い人達の方が圧倒的にうまいし、追い付きようがないんですよ、あんなの。



イオ:
 その当時好きだった曲などありますか?


銅蟲:
 super highway /nouvo nudeという曲ですね。
YouTube - beatmania 3rdMIX - super highway




銅蟲:
 HELL SCAPER / L.E.D.LIGHT-Gという曲も大好きでした。

YouTube - L.E.D.LIGHT-G - HELL SCAPER




銅蟲:
 HELL SCAPERはTECHNORCHさんが人生を変える事になったみたいなことを言ってた曲ですね。

 あとはあの当時とかCDJも揃えたんですけど、今みたいにUstができる訳でもなし、家で誰にも聞かせないで回してるだけというのがつまんなくて、全部売ったんですよ。



イオ:
 あまりクラブで友達は作らなかったんですか?


銅蟲:
 クラブで踊るのは好きなんですけど、人と話すのが億劫でしょうがないんですよ。音でかいから、わざわざ話すとか…それで一人で行って踊って一人で帰ってましたね。クラブ方面の音楽だと、ガバやトランス、ドラムンに当たる曲が好きですね。ドリルンベースが特に好きです。最近はドリルンとか言わないんですか?へえ。



イオ:
 今は曲の殆どをニコニコ動画にアップしていますが、ニコニコに置こうと思った理由はありますか?


銅蟲:
 コメントがつくし、わかりやすい所におこうかなと思って。MySpaceとかなんかおしゃれだし…。
 元々、自分がファイルをアップしてたプロバイダのサーバが夜逃げで無くなっちゃって、音楽ファイルを置ける丁度いい場所がなかったんで、とりあえずニコ動に行ったんですよ。なんとなくです。





(※1)全日本ファミプロ協会:ファミコンの攻略サークル。有志が集まり、コミックマーケット等でクソゲーを中心とした攻略本を販売していた。

(※2)波平会:全日本波形平和会。MODの情報サイト。
NamiHeiKai's Headquarter

(※3)MOD:フリーで扱える音楽ファイルの一種。サンプリングを中心とした楽曲を作成できる。
楽曲データが軽い事もあって、1998年当時は利用者が多かった。

(※4)BMS:PCでbeatmaniaを模倣した音楽ゲーム、およびゲーム内で使用されるファイルフォーマット。




発狂とドラムンベース
イオ:
 めちゃ振りな質問ですが、ねぎ姉さんと音楽についての関係性などありましたら教えて頂けるとありがたいです。


銅蟲:
 僕の漫画は、音楽を意識してる部分が多分にあるんですよ。なんかの音楽を聴きながら漫画を描いたってのが画面に反映されてしまうんですよ。
 なんで自分で読み返したときに、そのシーンを描く時に聴いていた音が自分の中で再生されるんです。音楽の要素を切る事はできないですね。

 でもネーム、話を考える時には、無音で考えます。下書きが終わって、絵を書くという段階になって、その時は話を考える脳の部分は基本的にもう使わないので、音楽を聴きながら作業をします。

 例えばまんがサイエンスの2巻を読むと、ファイナルファンタジー6の世界崩壊後の音が脳内で流れたり、クトゥルー(※5)を読んで、人が発狂するシーンになるとドラムンベースが流れるんですよ。人が発狂するのと、ドラムンベースは僕の中でかなりニアリーイコールです。



イオ:
 例えばドラムンベースで好きなアーティトはいますか?


銅蟲:
 横文字のアーティストが全然覚えられないんですけど、最初にHOSPITALなどのレーベルを聴いてました。アートコア以外だったら大体なんでもいいかな的な。
 乱暴だったりザクザクした系の方が好きです。



イオ:
 そのほかに好きな音楽、日常で聴く音楽はありますか?


銅蟲:
 ゲーム音楽ですね。好きが高じて、友人がゲーム音楽イントロ会という会をたまに開くんですけど、その時に参加して曲を持ち込んだりします。
 ファミコン曲と、音ゲーの曲が中心ですね。

 その他はニコニコ動画をグルっと散歩して、この曲いいなと思ったらとっておく感じです。最近だと、正月特番のサスケってあるじゃないですか。
 それでこの人はこの曲みたいにバックミュージックが決まってて、で、第何回目かのサスケでクリアした長野誠という人用の曲があって、それが超かっこいい曲で…みたいな…。

 あと話は飛ぶんですけど、4拍子じゃない曲も作ります。千と千尋の「いつも何度でも」とかは三拍子なので、あれにドラムンベースをくっつけたりして。
 長野誠のテーマ曲(X:last battle/佐藤直紀)の曲とかもそうだし、割と4拍子じゃなくてもノレるんですよ。
 オリジナルの「鉄骨を殴る黒姉さん」という曲があるんですけど、あれは6拍子にドラムンをくっつけたりしました。あれは知らない人がジョイサウンドにリクエストをしてて、なんか知らない所からメールが来て著作権がどうの、とか言われて、はい、みたいな。
 一年間でリクエストの上位に入ると歌えるようになるんですよ。まだ登録されてないんですけど。

 歌謡曲は谷山浩子、奥井亜紀など好きです。





(※5)クトゥルー:クトゥルー神話。作家、ラヴクラフトの作った世界観を元に作られた話の事。




好きな番組
イオ:
 好きなジブリ番組はありますか?


銅蟲:
 僕が好きなのは名探偵ホームズですかね。どの回ってわけじゃないんですけど、とりあえずホームズが乗り物に乗ると警官たちも乗っていって、乗り物が発車すると警官たちが振り離されたりして落ちて行くじゃないですか。あの一連の様式美が好きですね。



イオ:
 それでは好きなテレビ番組の話などもお聞きしたいんですが。


銅蟲:
 そんなに好きでもなかったんですけれど、昔フジテレビの深夜番組で、5コマ君っていう番組があったんですよ。4コマを最初に流して、その後の話なり、モチーフにした舞台を、劇団の人らが演じるんですね。それを見てたのが、小6だったかな。眠いけど気合で起きてて、待ってる間メタルマックス1をずっとやってました。5コマ君の情報がネットでも全然無くて、オープニングテーマが好きだったんですけど、(検索しても)曲名も出てこないんですよ。





好きな漫画
イオ:
 それでは好きな漫画の話などもお聞きしたいんですが。


銅蟲:
 4コマとは触れる機会が多くて、5歳ぐらいの時に「コボちゃん」を1話からスクラップしてたんですよ。昔のコボちゃんは横に長くて、今と少しノリが違うんです。
 「かりあげクン」も読んでて、で、小6から中1に行く頃が確かエニックスのドラクエ4コマ最盛期で、柴田亜美や衛藤ヒロユキがめちゃくちゃキてた時期です。
 自分らの4コマといえばあれでしたね。あとは「伝染るんです」も読んでたんですけど、自分的には「ゴールデンラッキー」の方がでかかったですね。
 初めて読んだ回が"スタミナ・ゴシック"という話で、あれは忘れられなかったです。なんか生き物がバタバタしてるだけ。やっていいんだ、って。
 そんで、中3あたりでパソコンサークルに入ってた時に、そこの会長が4コマ面白いの描いてて、パソコン雑誌に投稿して載ったりしてたんですよ。そうした時に、読むんじゃなくて自分で作って発射できるのは無茶苦茶かっこいいな、と。



イオ:
 例えばギャグ漫画などはどうでした?


銅蟲:
 激バ(激烈バカ)は最高ですね。僕はジャンプじゃなくてマガジン派なんですよ。なんでミスター味っ子やスーパードクターKを滅茶苦茶読んでました。
 後は、マガジンにいた変な人をよく覚えてて、みはらゆうすけとか。で、家にマガジンがたくさんあったので、弟がマガジンばっかり読んでて、マガジンですぐ終わった漫画のコレクターになっちゃったんですよ。で家に一巻で終わった漫画がたくさんあるっていう。好きな人にはたまらない状態です。

 後、「うめぼしの謎」っていうがギャグ王にありましたね。作者の人が確か高3から大学にかけて描いてた漫画で、作者紹介の写真が学ランなんですよ。
 4コマ漫画に対する方法論がしっかりあって、実用的なんですよ。あれは凄かった。



イオ:
 最近の4コマ漫画は読んでますか?


銅蟲:
 最近のは殆ど読んでないですね。「けいおん!」も読んでないです。僕の中の何かが壊れてしまう気がして。ガラスハートなんですよ。10年経ったら読みます。
後は「気分は形而上」が好きでした。哲学をネタにした4コマですね、あれは。僕は結構王道を無視してるんで、読んでない漫画は多いです。





今後の予定
イオ:
 今後の活動や漫画についてお聞きしたいんですが、これからは4コマ以外のものも描いていく予定はありますか?


銅蟲:
 4コマ漫画以外の描き方が未だにわかんないんですよ。ギャラが出るからって強制されないと4コマじゃないものは描けない気がしますね。
 それだとやばいんでどうにかしないといけないっていうか、いい歳なので軽く詰んでますね。
 ねぎ姉さんについては香山哲(※6)と組んで、200本書いたら1冊本にするというサイクルでやってきたいです。生活もあるので色々その辺の企画も考えてます。



イオ:
 なるほど。改めて話を伺えて良かったです。今日はありがとうございました。





(※6)香山哲:漫画家。「ねぎ姉さん」を出版している「ドグマ出版」を立ち上げた人物でもある。




最後に
webで公開されている4コマ漫画は星の数ほどあるが、「ねぎ姉さん」は作者の脳機能が疑われるほどに一度見たら忘れられない個性を持つ漫画だ。
そんな漫画を描く銅蟲氏がどんな音を聴いているのか、どんな漫画が好きなのかこの記事によって読者の方々が作者に少しでも近づけたら幸いである。ビート・ゴーズ・オン。




関連サイト
ねぎ姉さん




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