大衆酒場ベスト1000
第4回「ゆたか(石神井公園)/レバ刺し」
地元にガッツリ根を下ろした超優良店
 今回ご紹介するのは、西武池袋線の石神井公園という駅にある焼鳥屋「ゆたか」さんです。「石神井公園?また急にマイナーな駅だなオイ!」って声が聞こえて来そうですが、お察しの通り、僕の地元駅なのです。そう、お察しの通り、第4回にして早くもネタが切れ始めているのです。というわけで、今後大泉学園、石神井公園、上石神井など、西武線ユーザーのさらに一部にしか馴染みが無いような街が度々登場すると思われますが、ご興味無い方は「またか」と舌打ちでもして見過ごして下さると幸いです。

 さて、この石神井公園という駅ですが、名前の通り石神井池、三宝寺池という2つの池を中心とした緑豊かな公園の近くに位置し、駅の周りにはなかなか活気溢れる商店街も広がっており、けっこう素敵な街なんですよ。住んでみたい街No.1の誉れ高い“吉祥寺”を100分の1くらいにスケールダウンした感じを想像してもらえれば分かりやすいかな。実はこの石神井エリア、絶対数こそ多くはないものの、チェーンではない個人経営の居酒屋さんが点在していて、割とレベルが高いんです。で、件のゆたかは、そんなお店たちの中でも、僕が一番愛していると言っても過言ではない名店なのです!

 場所は駅の南口を出て商店街を2.3分歩いたらすぐ。外観はとことん地味で、失礼ながらとても一見さんが予備知識なしに入店するとは思えない佇まいです。特に若い女子なんかはどう考えたって向かいの小洒落た串ダイニング「笑う門」を選ぶでしょうね(あ、こちらもいいお店ですよ)。だけど場末大好きっ子の僕としては、どうしてもゆたかの赤ちょうちんに引き寄せられてしまいます。実は地元の人気店なので早めの訪問を心掛けるんですが、カウンターのみの店内はいつも先客で大賑わい。家族経営でしょうか、寡黙ながらも雰囲気のいい大将が席を確認し、手際のいいママが「ごめんね〜、そこ詰めてあげて」などと丸イス2つ分のスペースを確保してくれたりします。結果お客さんはかなりギュウギュウの席で飲食する事になるんですが、これが不思議と心地いいんですよね。接客や常連さんの雰囲気って居酒屋さんにとって本当に重要だよなぁと再認識。ちなみに店内はもうお手本のような“ザ・昭和の大衆酒場”。茶色く変色した壁のメニューがいい味を出すと共に、随分と長いこと値上げされていない事をも物語っています。掃除の状態から衛生面にしっかりと気を使われているのもよく分かり、店内にいるだけでも気分がいい。

 メニューは焼鳥が1串110円〜。基本のねぎまはもちろん、間にピーマンを挟んでみっちりと串に巻かれた鳥皮、弾けるような食感と甘味が堪らないレバー、大振りで食べ応えのあるつくねなど、例外なく高いレベルでおいしいです。単品料理は350円くらいから色々とあり、かなりインパクトのあるビッグサイズのはんぺん焼きや、ほうれん草納豆(納豆に茹でたほうれん草をたっぷり混ぜて食べる)なんて珍しい物もあって飽きませんね。一品一品にきっちりとした仕事がなされており、お店の姿勢が現れているようで本当に安心するお店です。380円〜用意されているサワー類の“コダマサワー”のロゴが入ったグラスもレトロで素敵。

 そんでもって今回の表題であるレバ刺しなんですが、ゆたかには“レバ刺し”“牛刺し”“コブクロ刺し”と、3種類の肉刺しメニューがあります。どれもお手頃価格の450円。牛刺しは周囲を軽く炙った大振りの牛肉がたっぷりと盛られ、かなりの満足度。コブクロ刺しは細切りのコブクロにたっぷりのネギとにんにくを和えて頂く、酒が進み過ぎる一品です。もちろんどちらも最高なんですけど、酒飲みにとって肉類の刺身の中でも、とりわけレバーってのは、何か神々しい求心力がありますよね。名前を聞くだけで居ても立ってもいられないような、スペシャルな存在感。レバ−=肝臓ってのと何か因果関係があるんでしょうか。ですのでレバ刺しと聞くと急に、やれ色ツヤがどうだ、やれ角が立ってないとどうだとか、俄然こだわり出すお店、お客も多く、5枚位が綺麗にお上品に盛られたやたら四角いビジュアルのレバ刺し(980円)なんてのをたまに見かけたりしますが、ゆたかさんはそんなこと我関せずって感じです。“崩れなければいいよね”ってなノリで皿いっぱいに盛られ、一人で頼むとけっこう難儀しそうな大ボリューム。これがお味の方も非常によろしい!何しろ1枚がでかいので口いっぱいに特有のネットリ感が広がり、しかし歯応えはさっくりと心地良く、感じるのはこれでもかってくらいの甘味。臭みはゼロ。この時ばかりは嫌らしい性格となり、口の中で探りに探ってみても、臭みは一向に見つかりません。街の片隅でひっそりと、無駄に自己主張をすることなく、ここまでレベルの高い品を提供しているなんて、天晴れとしか表現の仕様がないですね。そりゃー常連さんで賑わうはずだ。




レバ刺し/450円
レバ刺し/450円




 最後にゆたかさんならではの裏技を。レバ刺しを頼むとママが「にんにく、しょうが、ゴマ油どれにする〜?」と聞いて来てくれます。ここで軽く悩み“ゴマ油”を注文する酒飲みさんは多いことでしょう。しかしこれは間違い!実はカウンター上にはすでに、正油、七味、一味、などの基本調味料と共に、ゴマ油と塩が並んでいるんですね。結果ゴマ油と頼むと、「そこにあるから使ってね〜」となるわけです。ここは、にんにくかしょうが、どちらか好みの方を注文して、ゴマ油ダレも自分で調合し、味の違いを楽しむのが良策でしょう!

 今回はこんな感じ。よかったら行ってみてねー!チャオ!




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