大衆酒場ベスト1000
第5回「もつ鍋帝王ふるさと(池袋)/もつ鍋」
Encounters of the モツ鍋!
 寒くないっすか?なんか。僕は基本たいへんな暑がりなので、いつもの冬なら着ると5分で脱ぎ捨てたくなってしまうヒートテックも、今年はずいぶんと重宝しました。今冬が特別なのか、それとも僕の代謝が年とともに悪くなってきたか。ともかくこう寒いと俄然食べたくなるのが“鍋”ですよね。様々な具材から旨味を抽出し、その旨味を凝縮したスープを再度具材にフィードバックさせて食べる、食の大発明こと鍋料理。幸せな食卓の象徴っぽいイメージもあって、日本人の皆様ならたいてい大好きなんじゃないでしょうか。なかんずくシメのおじやは最高で、僕はこの世で一番うまい物は?と問われれば、“カレー”もしくは“鍋の後のおじや”と答えるほどに、この鍋という文化を愛しております。というわけで、今回は鍋、中でも独特の魅力が光る“モツ鍋”をご紹介します!

 早速ですがこのモツ鍋って料理、ここで初めて食べるまで、僕の頭の中に占める割合は0.01%程度のもんでした。だってまず食ったことあるかどうかが思い出せない。というか、たぶん無い。モツ鍋に関する情報といえば、バブルの頃に“ヘルシー”とか言われて大流行し、数え切れないほどの専門店が出来てほとんど潰れたってくらい。僕の中でバブルのイメージって、ジュリアナ=ボディコン=モツ鍋って感じだったんですよね。当時は子供心に「きらびやかでゴージャスでアーバンな生活を必死で送る大人たちも、夜は自らのヘルスの為に、ほんとの肉も入ってない臓物と野菜だけの鍋を貪り食うんだな…。」となんとなく下品なイメージでもって捉え、故にあまりおいしそうと感じたこともありませんでした。しかしこれが自分も大人になり、酒の味を覚え、煮込みやレバ刺しの滋味も知るようになると「一度食ってみたいな」と思うようになるもんです。職場が池袋に変わった数年前、うまい居酒屋探しには無駄に余念のない僕ですので「もつ鍋帝王ふるさと」の情報はすぐに入手しました。インターネット曰く「池袋に絶品のモツ鍋屋有り」。もちろん早速突入しましたよ。以来モツ鍋は、寒くなる度に「あ〜そろそろふるさとに行きたいな〜」と、僕の頭の25%くらいを占める存在になりました。

 もつ鍋帝王ふるさとは、池袋の東口に2件、西口に1件。僕がよく行く東口1号店は30年以上の歴史があるらしく、いい感じに燻った内装がたまらない雰囲気を醸し出しています。店内はけっこう広くて100人以上は入れそう。大木からそのまま切り出したような不揃いのテーブルには全席コンロがセットされており、着席するや「何人前ですか?」と聞かれます。もちろん“モツ鍋を”ね。つまり居酒屋ってよりはモツ鍋屋と考えた方がいいんでしょう。店名でも謳われているので当然か。とはいえ単品のおつまみメニューもかなり充実してますよ。刺身系から揚げ物系から、普通の居酒屋にあるようなもんは一通りあります。ただし!別にそれらを頼むなとは言いませんが、積極的におすすめもしません。僕ならその分鍋に具を追加しますね。それくらいここは、鍋がうまいし他は普通。1人前1,500円也のセットを適宜注文し、到着を待ちましょう。




もつ鍋/一人前1,500円〜
もつ鍋/一人前1,500円〜




 さて、モツ鍋が運ばれて来ると、初めての方はまずその見た目の美しさに驚くんじゃないでしょうか。富士山をきっちりトレースしたようなシャープなフォルム、これを見ると「あぁ、もう少しでふるさとのモツ鍋が食べられるんだ…」と、期待が最高潮に達しますね。正油ベースのスープに、具材はモツ(和牛のマルチョウだと思われます)、大量のキャベツ、ニラ、にんにく、唐辛子、以上!この潔さが素敵です。で、グツグツと煮込むこと数分。いい感じにクタッて、当初の富士山が見る影もなくなって来たら食べ始めましょう。もちろんふるさとさんの上質なモツに臭みなんてありません。煮込めば煮込むほどどんどんどんどんダシが出て、放物線的カーブを描くこともなく、最後まで一直線にうまくなり続けます。ご存知の通り(?)モツ鍋とはすなわち、キャベツを食す料理。ビーフ、ポーク、チキンなどの各種ミートとは一線を画すモツならではの濃厚な旨味と油を吸ったキャベツは、悶絶モノのうまさです。ダシが出きったモツもまた、シャキっとした歯応えがいいですね〜。単品具材の追加も細かく出来ますので心ゆくまで堪能して下さい。ただし腹八分目で押さえておくことを忘れずに!そう、すっかり具を食べ終わって黄金に輝くスープに、セット代金にきちんと含まれている中華麺を投入!このシメの麺だけは、何が何でも食べて欲しいのです!キャベツの甘味もたっぷり染み出し、今やパーフェクトな味として完成したスープと、もっちりとした麺の絡み。うますぎてむせび泣いても責任持ちませんよ?もうね「もし自分がラーメン屋出すならこのスープで勝負する!したら即座に日本一だしー!」と、ラーメン業界から苦情が来そうな妄言すら吐いてしまうほどに至福極まりない味です。こりゃーいくらボディコンで着飾って、さてシータクでアナジュリにでも繰り出すかなんて生活を送ってても、ついつい下品に貪り食いたくなる味だわ。と納得。それ以降モツ鍋は僕の大好物になりましたが、未だここを超えたと思える味には出会っておりません!

 というわけで今回はこんな感じ。あ、行く時は予約した方がいいっすよ。ではー!




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もつ鍋帝王




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