大衆酒場ベスト1000
第26回「どんのば(新宿)/さくさくコロッケ」
“敗北系”という概念
今これを読んでいる方の中にはご存知の方もいらっしゃると思いますが、僕はクラブ「DJストーム」というWEB漫画で作画を担当しています。
その原作者であり、また共に“LBT”というレーベルを立ち上げたレーベルメイトでもあるDJイオ氏が以前から提唱している1つの概念に“敗北系”という物があります。

例えばあなたの街に、あなたがそこに在ると認識する以前から確実に存在したラーメン屋。
うまくもないけど食えなくもない。
安くもないけど高くもない。
お昼時だからと言って行列するような事はもちろんなく、そこにあるのは年季の入った調理器具を駆使する年季の入ったおっさんによって作られたラーメンと炒飯。
“近いから”という理由だけでたまに行くこの店で、気だるい空気の中すするラーメン。
そこにあるのはなんですか?

そう、“敗北感”です。

いや、別段何かに負けてるって事はもちろんないですよ。
だから敗北ではなく、敗北“系”

この言葉にはっきりとした定義というものは無いのですが(イオ氏未確認)、「なんとなくここ、敗北系だよね〜?」て店、ラーメン屋に限らずたくさんありますよね?
以来LBTのメンバーの間では、敗北系という言葉は割とメジャーに使用しております。

世の中には様々なタイプの敗北系のお店が存在しますが、個人的にはどこもそんなに居心地の悪さを感じないんですよね。
むしろ適度な敗北感が心地良い。
勝ち組、負け組、営業成績などという、生きて行くには避けて通れない重圧を一切意識しなくていいのが敗北系の懐の深さなのかもしれません。

…と、こんな導入から紹介してしまって誠に申し訳ないのですが、今回ご紹介するのは新宿の「どんのば」さんです。

どんのばさんのキャッチコピーがこれです。




100円酒場
100円酒場




何が100円なんでしょうか?

答えは“ビール”です。

あ、あと、サワーもです。

あとカクテル類と、ハイボールと、焼酎と、ワインと、梅酒と、とにかく色々です。

というかこれを見てもらうのが早いですね。




100円ドリンクメニュー
100円ドリンクメニュー




いかがです?
常識的に考えて、1杯100円そこらで手に入れられるアイテムではない“お酒”。
これを少しでも安く自分の体内に摂取し、少しでもたくさん酔っぱらってやろうという欲求。
そこにあるのは、人間の中でも最も情けないジャンルに属する“欲”であり、漂う敗北感も半端ないっすよね!

でもいいじゃないですか!
自分たちの儲けを削ってでも、そんな我々の敗北感を受け止めようとしてくれる店がそこに存在するんですから。
恥ずかしがらず積極的に扉を開けて行きましょうよ!

というわけでひとまず、このメニュー裏返してみましょうか。




裏面
裏面




「大切なお客様へ」って書いてあって、何やら強調やカラーを駆使した文字列が並んでいますね。
お店のポリシーでしょうか?
いえ、違います、“注文上のルール”です。

そりゃあそうだ、ただでさえ苦労して値段を下げてんですから、ルールを守らない人が来たら大ダメージ!お店はすぐに潰れちゃいますからね。
気になる項目を見て行きましょう。


○ご利用時間は2時間(ラストオーダーは30分前)とさせて頂きます
→ただでさえ安いのに、1杯で何時間も粘られたらたまらないですからね。

○ドリンクのオーダーは空のジョッキと交換でお願い致します
→安いからってきちんと飲み切らないで次を頼もうなんて言語道断ですよね。

○お通しのほか、お一人様お料理一品以上のご注文をお願い致します
→うんうん、喫茶店じゃないですからね。
これを怠るとドリンクが1杯につき315円になると書いてあるのでミスの無いようにしたいですね。

○ラストオーダーはお一人様1杯までとなります
→これは居酒屋あるあるですね!分からない人にはさっぱり分からないと思いますが。
ラストオーダーと聞くとつい焦って2杯くらい頼んどきたくなっちゃうもんですが、ルールは守りましょう。

○飲食物のお持ち込み禁止です
→そりゃあそうですね。
100円の酒頼んで、持参したつまみ食うなんて外道がこの世に存在するんでしょうか。


ってな感じです。
他のお店ではわざわざ表記されていない事ばかりですが、全て常識レベルの内容ですね。
この1枚がまた敗北感の演出に一役買ってます。

それから店内なんですが、




こんな感じ
こんな感じ




意外じゃないっすか?
間接照明なんか駆使して落ち着いた空間を演出しようという気概がちゃんと感じられます。

ここ、最後までどんのばさんのポイントになって来るんですが、“安っぽく見られない事を諦めてない”んですよね。

だからまず、店内はちゃんと綺麗。
もちろん他のチェーン店に比べて特筆すべき点は一切無いんですが、とにかく綺麗にはしてあります。
立地が新宿の中でもディープゾーン、しょんべん横町ですからね。
この清潔感は立派と言えますよ。




生ビール/105円
生ビール/105円




さてここからは肝心のメニューなんですが、まずお酒、ビールはなんとプレミアムモルツです!
ちゃんとグラスじゃなくてジョッキで出て来て、僕はビールの味が細かく分かるほどの舌は持ち合わせてないんですが、なんかフルーティーな気がして本当にプレミアムモルツみたいな感じがしましたよ。
お通しの鴨の薫製がまた、安っぽく見られない事を諦めてなくて、哀愁を感じますね。

それからサワーとかも全部おんなじジョッキで出され、むしろ濃いくらいのちゃんとしたお酒でした。

次に料理ですが、まーそこまで安いってわけじゃないですはっきり言って。
かと言ってバカ高くもないですけどね。
例えば、冷やっこが380円冷やしトマト450円ポテトフライが480円とりのからあげが580円ジャーマンソーセージが680円トマトとバジルのパスタが800円、等々…。
ドリンクの値段を考慮すると文句をつけるような価格帯ではないでしょう。

ただ肝心の味の方ですが、こちらはまぁあれですよ、今回はうまいとかまずいとか、そういう表現はなしでもいいでしょうか?
なんというか、居酒屋さんで始めて感じた感覚だったんですが、全ての料理名の後に“www”って付けたくなる感じ。




大根サラダ/580円
大根サラダ/580円




大根サラダwww
大根にノリとカイワレとドレッシングかかってるwww




とりのからあげ/580円
とりのからあげ/580円




からあげwww
なんか赤い粉ふってあるwww

決してまずいとは言いません!
強いて表現するならば、“かわいい味”。
それで勘弁して下さい。

そして最後に、今回一番かわいかった1品を紹介して締めとさせて下さい!




さくさくコロッケ/490円
さくさくコロッケ/490円




かわいすぎるwww

まずコロッケ本体ですが、もうなんの変哲も無い冷凍コロッケです。
しかし見て下さい!
諦めてないでしょう?
安っぽく見られない事を!

下にはフレンチのソースかなんかを意識したのか、普通のおソースが敷いてあります。
そこにコロッケを2個乗せて、間にパセリをあしらってあります。
4カ所にデコレーションされた赤い点、これなんだと思います?



ケチャップwwwwww

極めつけはやはり、添えられたナイフとフォークでしょうね。
誰が食うんだ!コロッケをナイフとフォークで!!!

…と、いうわけで、大変可愛らしいどんのばさん、新宿だけでなくいくつかの街にあるらしいので、機会があれば是非行ってみて下さいね。
実際お酒が業界屈指の安さなのは紛れも無い事実ですし、僕もきっとまたお邪魔すると思います!


さて、今回はそんな感じです。
来年も引き続き、面白かったり、おいしかったり、変わった居酒屋体験記をみなさんにご紹介出来ればと思っております!
これから年末年始、飲み会の増える1年で最高の季節ですねー。
どうか体だけはぶっ壊さないように楽しんで下さいね。
今年も1年ご愛読頂いた皆様ありがとうございました!

それでは良いお年をー!




しかしこのメニューは壮観だね!
しかしこのメニューは壮観だね!




関連サイト
100円酒場居酒屋どんのば 新宿西口店 - 新宿西口/居酒屋 [食べログ]




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